PlayStation 5やXbox Series Xの SoC(System-on-a-chip)は、台湾のTSMC社が生産していますが、需要が急増したこれら次世代ゲーム機によって、CPUやGPUの生産に影響を及ぼし、SoCなど半導体に使用される層間絶縁材料「Ajinomoto Build-up Film(ABF)」が不足に陥っていると、Gigazine(参照:ExtremeTech)誌が伝えています。
ExtremeTechによれば、ソニーやMicrosoftがAMDから購入した7nmプロセスチップの最大80%が、家庭用ゲーム機用に確保されているとのこと。そのAMDのチップはAMD自身が生産しているのではなく、世界最大の半導体ファウンドリであるTSMCが生産ラインを抱えています。
ExtremeTechによると、PlayStation 5やXbox Series Xの登場によってAMDのCPUやGPUの需要が急増したことで、2020年秋頃からTSMCがチップの絶縁体に用いられる「Ajinomoto Build-up Film(ABF)」の不足にあえいでいることが供給のボトルネックになってしまっているそうです。
ABFは味の素グループが開発した高性能半導体の絶縁材です。ナノメートルレベルで回路が構築される現代のCPUでは、複数の回路が何層にも重なった多重構造が当たり前になっており、その層の間を絶縁するためにABFは使われています。味の素によれば世界の主要なPCのほぼ100%に使われているとのこと。
このABFの不足はAMDだけではなくIntelやNVIDIA、Qualcomm、Apple、Samsungなど、数々のチップメーカーに大きな影響を与えています。経済ニュースメディアのDigitimesは「2021年にはABFの供給不足が悪化する可能性がある」と2020年6月に報じていますが、この予測は的中したようだとExtremeTechは述べています。
また、PlayStation 5やXbox Series Xに採用されているGDDR6の歩留まりが悪いことがGPU不足の一因とす可能性もExtremeTechは認めています。ただし、ExtremeTechは「どのコンポーネントの不足がゲーム機の供給不足を引き起こしているのかははっきりしていない」とも述べ、今回のPlayStation 5やXbox Series Xの供給不足は単なる歩留まりの問題では説明できないとしています。
ExtremeTechは、TSMCにABFを卸す主要サプライヤーは、いずれもABFの供給不足に陥っていると主張(筆者注:Extremetech原文では rumor ”噂している”)。さらに、ABF不足が原因で、AMDはノートPCの需要に対応できず、Zen 3アーキテクチャのCPUを搭載したノートPCが市場に登場する2021年第3四半期頃にはさらに問題が悪化するだろうと予想しています。
VIA: Gigazine
Source: Extremetech
ABFの世界シェアは100%に近いとのことですが、SoCにTegraとNvidiaを採用している「Nintendo Switch」が年末に60万台も出荷されているのは、なぜなのだろう…?”味の素”の話が唐突すぎる。